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「番格ロック」見てきたよ

♪あ~ああ~ あ~ああ~ I'm just a lonely girl~
ハープシコードの出だしも印象的な甘く切ない名曲、キャロル(矢沢永吉とジョニー大倉のいたバンド)の「番格ロックのテーマ」。これは映画「番格ロック」のテーマ曲とは知っていたものの、曲のみ名高いこのB級スケバン映画はVHSにもDVDにもなっていなくて見られませんでした。

そこで偶然にも、「ラピュタ阿佐ヶ谷」 なるとこで上映があることを知ったんだけど、とはいえ阿佐ヶ谷は遠いし、「B級だからVHSやDVDになってないんだろ……」と思ったのも事実。でも検索してみたら映画見なブログの「アヌトパンナ・アニルッダ」で、「名作」という評価なので心が動く。で、残業ばかりでムシャクシャした今週、上映最終日となる金曜日に雨の中をレイトショー見にいってきました。出不精なのに。

ちなみにこの映画、データベースなんかによくある公式紹介だとなんかズレてる感じなので、映画に詳しい人たちのブログを参照したほうがよろし。「番格ロック」で検索しよう(タイトルシーンを写真掲載してるとこもある)。ちなみに、脚本に大和屋竺(前にも取り上げたが日活ハードボイルド系脚本家)がいて、音楽はキャロルだけでなく、八木正生がやってたりする。

あのハープシコードのイントロが海の情景に……「東映」のオープニングに重なって、最初笑ってしまったけど、そのあとの、けだるい昼下がりの町中をちんたらちんたら歩いていくセーラー服ズベ公たちの風景に歌声が重なってくと、「少女のせつなさ」感がぐっと来ますた。

昔の映画を見ること自体が少ない私のような人間にとっては、30年以上前の町の景色自体が息苦しいほど切ないものがあった。そして70年代までそこかしこにあった「日本の貧乏」を感じさせる描写、場末感。
トタンで出来た家の建ち並ぶスラムじみた小径のなかの主人公・由紀子の家っつーかプレス一台の家内制工場、愚直で無学で謝ってばかり人生な感のある母親(初井言栄ね)、宗教がらみの善意が善人のイヤげを感じさせる保護司、仕事仕事で頑固で短気そうで油まみれでプレスを踏む父親。……アル中になるか自殺したくなるほどくさくさした底辺、いっぽうオッパイぼーんで美人で気が強くてはちきれる若さを持てあます主人公。そりゃグレるわな。

ばったんばったん、繰り返されるプレス機の音、町中を走る都電の音や警笛。
かぎろい立つ70年代の町の景色。

しかし家から飛び出ても場末感、B級感。根城は赤羽、対立するスケバングループも池袋。新宿や渋谷を舞台のツッパリの華の話じゃない。退屈な日々が続くアメリカ中西部あたり舞台の「俺たちに明日はない」な雰囲気に、ボニーはズベ公どうしでつるんでる。くずれたセーラー服で闊歩し(でもスカートはまだ膝丈の時代)、ノーブラにパンタロンで乱闘を繰り広げる、モラトリアムの僅かな輝き。
クライドならぬ昔の恋人には偶然再会できたけど、愛しのツッパリ君は今ヤクザ。さらには小さな組でチンピラで、ダサいテキヤ感いっぱい。……どう転んでも、アウトローになっても庶民になっても先は見えてる、デッドエンドストリートの切なさMAX。

そんでもって、デッドエンドストリートで夢見る「自由」のきわめつけの象徴が、最強の敵(とも)である「アラブの鷹」なる池袋の総番。当時の流行ではあるけど真ん中分けの黒髪ロング、そして神秘的で切れ者的な表情、時代的に見てもおそらくアラブ赤軍(当時)の重信房子のイメージでせう。白の上下を着る由紀子、黒の上下を着るアラブの鷹。一組のハサミのそれぞれの刃をナイフ代わりにする二人は、まさに二人一組。ホモの極北はプラトニックに行きレズの極北はSMに行く、という意見を読んだことがありますが、そういう文脈で行くとホモセクシュアルかと。てか「ホモ」って「同質」って意味だからねぇ。

話の進行につれ、都電やJRに乗って殴り込みに行く(!)ズベ公少女たちの「自由」が、ヤクザや警察といったリアル社会の中に組み敷かれていく過程も、なかなかせつないものがありました。かつて単なるツッパリ少年とツッパリ少女だった二人が、チンピラと番格として再会したように。
んで主人公は結局、ひたすら熱望していた「タイマン勝負」で、アラブの鷹を破ったけれど……そのあとは何もなくなってしまう。根城だった赤羽のスケ番グループは解散同然、社会(ヤクザ)に刃向かった唯一の“同志”「アラブの鷹」はシャブ漬けにされてソープに沈められ、恋人ともやがては「銀バッチとバシタ(女房)」の先の見える未来。……たまんないよね。

てなことで東映ヤクザ映画的に真っ赤な血の出る結末だけど、ジョニー大倉の甘い歌声とあいまって、やっぱり70年代のやるせなさと叙情がありますた。
ちなみに「スケ番もの」でこういう少女の切実系では、石井隆の短編劇画「横須賀ロック」がオススメ。画は映像に比べると陳腐化しにくいから、描写の違和感に囚われず、純粋にストーリーで泣けます。
いっぽうで、「番格ロック」は絶対に万人にオススメ!とは言わないけど、「時代風俗の記録としての映画」の価値を再確認。すべては思い出になるのだな。


※あ、VHSやDVDになってない理由は、キャロル関係の権利がゴタゴタしそうだからではないかとようやく思い当たりました。元メンバー仲悪いし、キャロルの映像記録って少ないし。「ファンキー・モンキー・ベイビー」と「ルイジアンナ」も劇中で演奏してて、若さ全開なメンバーがセクシーに歌ってます。写真ではダサく見えるリードギターの内海利勝は映像で見ると甘くメランコリックな顔立ちで、かの鈴木いづみが小説「ハートに火をつけて!」で主人公(か主人公のグルーピー仲間だか)が付き合ってる男のコとして書いてましたが、それもさにあらむって感じでした。余談。
※2  12.25記 スマヌ、「ハートに火をつけて!」で出てくる男のコのモデルはゴールデン・カップスのルイズルイス加部だった。つーことで、この部分は単純に「ウッちゃんは動画で見るとかっこいいね」ってことで。

※さらに余談。私ゃ古今の俗語・隠語が大好きだけど、劇中で男にハマった水商売風の元仲間を 「あれはピーチン(?)になったから」という部分は不明だった。ちと意味が知りたい。
↑後日補記……親切な方にご教唆いただいたので、コメントを参照のこと♪

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コメント

素晴らしい感想読ませていただきました。

最後に書かれた隠語の件ですが、「ペー打ち」と山内えみこは言っていたのではないでしょうか。
「ペー」は薬の隠語ですから、薬物中毒という意味かと思います。

はじめまして&お立ち寄りいただき、ありがとうございます。私の感想はともかく(汗)、映画は(ご覧になったのでしょう?)よかったですよね~。

ぺー打ち……なるほど! 男というより薬にハマってたのですな。ご教唆ありがとうございます! m( _ _ )m レスがあるとも思わず書いてみたので、感激もひとしおです。

謎なことばがわかると嬉しくなって、日常ですぐ使ってみたくなるのですが……、こりゃなかなか使う機会がなさそうな(笑)。

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